最近、著名な方々の講演を聞く機会や、書籍を読む機会が増えてきたので定期的にアップしていきたいと思い、過去のメモからひっぱってきた話をまとめていきたいと思います。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)の著者として有名な、楠木さんの話を聞く機会がありました。
イノベーションの歴史
みなさんご存じだとは思いますが、イノベーションの歴史は古いんです。どの時代から話せば良いのでしょうか。
正しいイノベーションを生み出すために、正しく理解をするためにまずは歴史を紐といていきたいと思います。
イノベーションの起源
1911年、オーストリア出身の経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターによって、初めて定義されたのが起源といわれています。
元々「innovation」は、英語で、動詞の「innovate」(刷新・革新する)に名詞語尾である「ation」がついた言葉です。
シュンペーターは、イノベーションを経済活動内で生産・資源・労働力などが今までと異なった形で新結合することと定義しました。
また、その中でもイノベーションを5つのタイプに分けていました。
- ユーザーがまだ知らない価値、または新しい品質価値の生産
- 新しい生産方法の導入
- 新しい販路の開拓
- 原料などの新しい供給源の獲得
- 新しい組織の実現
詳細はここでは説明していきませんが、イノベーションはこうして生まれました。
イノベーションのジレンマ
1997年、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が「The Innovator’s Dilemma」(イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))を提唱しました。
内容としては大企業が既に保有する既存事業の大きな収益の前に、新興市場の魅力を軽視してしまい、新興市場への参入タイミングが遅れる事を説明しています。
また、新興市場は自社が保有する市場を破壊してしまうというカニバリズムによっても参入が遅れる傾向にあると言われています。
この辺りからイノベーションというキーワードが徐々に世界に広まっていく事となります。
イノベーションの混在
勘の良いみなさんならお気づきかもしれませんが、シュンペーターの説明しているイノベーションと、クリステンセンが説明しているイノベーションのジレンマには大きな違いがあります。
その違いは持続的イノベーションと破壊的イノベーションにあります。
実はイノベーションのジレンマより前の1995年にクリステンセンが「Disruptive Technology」(破壊的技術)がもたらす変化を「Disruptive Innovation」(破壊的イノベーション)と言うと提唱しています。
現在、イノベーションという言葉が正しい理解がされていない原因は、この対になる概念を正しく理解していない事が原因だと考えています。(私も改めて調べて理解しましたが…笑)
馬車はいくらつなげても蒸気機関車にならない
持続的イノベーションと破壊的イノベーションの例で良く出てくる例が、馬車と蒸気機関車の例ですね。
馬車がより進むようにするためにはどうしたら良いでしょうか。
馬を増やす?車輪の抵抗を減らす?
色々とやり方があると思います。
例えば圧倒的な軽量化。スピードが今までよりも150%上がった!としても、これは持続的イノベーションでしかありません。
もうお分かりですね。蒸気機関車が破壊的イノベーションです。
今までにあった馬車という市場をごっそりと奪い去っていきました。
当然馬車の市場は残りはしますが、今現在はどうでしょうか?
動物の力を利用した移動・輸送手段は全て燃料を利用した手段に切り替わっています。
限界を超えられない
持続的イノベーションは、いつか限界が来るという特性を持っています。
馬車の力を上げ、引く力をあげるためには、馬の数を増やすのが一番早い手段ですが、
馬を2頭3頭繋ぐのは考えがつきますが、100頭なんて繋げないですよね。
そもそもそんなものを引っ張る事があり得るのかということや同時にコントロールできるのかという問題もあります。
他の例で言うと、飛行機のリクライニング。
A社はリクライニングを110度ではなく、130度にしました。
それを受けたB社は150度にしました。
C社は、180度。今はやりのフルフラットシートにしました。
これ以上はありえませんよね。200度だなんて逆に疲れてしまいます。笑
携帯音楽プレーヤーは初めは100曲とかでした。
気がついたら3万曲ですよ。そんな聞かないって、という。
限界を超えられない、追いつかない、これが持続的イノベーションです。
発見だけではイノベーションではない
イノベーションには重要な要素があります。
それは商業化するということです。
つまり最近世の中をにぎわしたSTAP細胞はそもそも存在しませんでしたが、
一時期話題になったiPs細胞は、商業化できていないのでこれはイノベーションとは言いません。
破壊的イノベーションの事例
では、破壊的イノベーションとはどういったものか
いくつかの事例を含めて話していきましょう。
価値の次元を変化させる
破壊的イノベーションは、価値の次元を変化させます。
例えば、カメラを例に取ってみましょう。
今やデジタルで撮るのが当たり前になっていますが昔はフィルムカメラでした。
フィルムカメラ時代はどういった価値が中心だったでしょうか?
それは、画面の綺麗さ(画素数)です。
デジカメが出てきた当初、画素数はフィルムに比べたら格段に低かった訳です。
まともに画素数で勝負をした場合は、勝ち目がありません。
ここで価値の次元が変わります。
今までのフィルムカメラは記録という事に価値を置いていました。なので画素数が重要でした。
しかし、このタイミングで持ち運びと言う事が価値に変わります。つまり画素数は最低限だけあれば良い状態になりました。
大事な事はポケットに入り、手軽に撮影できる事。
デジタルカメラという技術により記録ということの価値が下がり、ユーザーの価値基準が変わっていきました。
最大の賛辞
破壊的イノベーションへの賛辞は、一般名詞ではなく固有名詞になる事です。
どういう事かというと、以下のような発言が世の中で起きると言う事です。
「わが社のIBMは富士通です!」
「ちょっときみ、これゼロックスしてくれないか」
「俺のウォークマンは松下のだぜ!」
「私のiPodはSonyよ」
「ヤフーでググる」
破壊的イノベーションが生まれない理由
破壊的イノベーションと持続的なイノベーションの違いが分かったのに、何で破壊的イノベーションが生まれないのでしょうか。
過去のイノベーションと勘違いしていた例を見てみましょう。
間違ったイノベーション事例
みなさん一度は飲んだ事があるだろう十六茶。実はあれ、続きがあります。
数を増やせば良いだろうということでドンドンと増やしていくんですね。
最近は健康ブームなので五穀米というのが出ていました。ドンドンと数が増え、今や雑穀米。
僕らは鳥じゃねーんだぞ、という話しですよ。
何でこんなことが起きるのか
破壊的イノベーションを生み出したいのになんでこんな事が起きてしまうのでしょうか。
この答えがイノベーションのジレンマの中に詳しく分かりづらく書かれているのですが、ここで大事だと思う事を書くと、持続的イノベーションは物差しがあるため資源配分しやすいという事があります。
過去、販売していた商品が1億円の売上をあげていたとして、販売していた商品の機能を倍にしたら売上が2億円になりそうな気がしませんか?
過去のデータなどからそのロジックを導き出すのは簡単なんです。
だからこそ、十六茶があんなにも暴走してしまう訳です。
(決して十六茶が嫌いなわけじゃないですよ、爽健美茶派ですけど)
ちなみに十六茶もちゃんと価値の次元を変えて戦えていますよ。なんだと思いますか?
答えは、これ。
破壊的イノベーションを生み出すために
じゃあどうやったら破壊的イノベーションを生み出せるんだよ!ってそりゃそうなりますよね。
私もそうなっています。
残念ながら破壊的イノベーションは、めったに起きないのです。
イノベーションは組織ではなく個人の能力に由来するのであって大事な事は
「思いつくか思いつかないか」の違いだけでしかありません。
頑張って無駄なんです。
ただヒントになるとしたら、破壊的イノベーションは、「人間の本性」と言われています
自動車は「楽をしたい」
Facebookは「自己愛」
LINEは「無駄話」
いかに普段の自分の生活の中で、人間の本性を見つけて思いつく事ができるか、これがキーになっていると思います。
イノベーションに向けられて言われる最大の賛辞「なぜこれが今までなかったんだろう」。
誰も気がついていない隙間を目指して今日からまた意識を高めていきたいと思います。